銀行員は、専門的な知識が必要な職業です。そのため、入行前から定年まで常に資格取得へ向けた自己啓発が求められます。
ただし、銀行員に要求される資格は、必ず取得しなければならないものから、非常に難易度の高いものまで広範囲に及びます。ですので優先順位を意識し、徐々にレベルの高い資格取得を目指していくことが重要です。
この記事では、現役銀行員としての実体験も踏まえ「入行5年目までの資格取得」をテーマに解説します。
<執筆者の略歴>
銀行員5年目ながら、取得してきた資格数は合計17。
1級FP、証券アナリストなど高難易度資格取得を通じて得た知識を活かし、現在は本部の企画部門を担当。
銀行員5年目の私が実際に取得した資格一覧
銀行員5年目の私が、今までに実際に取得した資格は、入行前から始まり全部で17つです。
資格取得に積極的な銀行ということもあり、世間の一般的な銀行員より比較的多く資格を取得していると思います。ですので、一つのロールモデルとして見ていただければと思います。
入行前にとった資格
- 証券外務員1種(2種)
*証券外務員資格は、資格取得を目指す銀行員にとって最初の試練になります。
私の勤める銀行では入行半年前(10月頃)の時点で、入行までに取得するように指示がありました。なお金融商品販売に必要な資格であり、合格するまで何度でも再受験が必要です。
私自身、大学の専攻と重なる部分も多く侮っていましたが、意外に出題範囲も広く、苦労させられた記憶があります。
※決して入行の条件ではありませんし、当然不合格でも罰則はありません。また、銀行毎に取得必要時期には差があると思います。
入行1年目にとった資格
- 生命保険募集人資格(一般、専門、変動各種)
- 損害保険募集人資格
- 銀行業務検定 法務3級
- FP技能検定3級
- 銀行業務検定 財務3級
- FP技能検定2級
- 銀行業務検定 税務3級
御覧の通り、資格取得数は5年間の中で圧倒的に多かったです。前段の証券外務員資格同様、各種保険販売要件となる資格に始まり、各種3級~FP2級までを1年間で取得しました。
多くの同期行員が苦戦している中、最初の1年間を全試験合格で乗り切れたことは、この後の自信にもつながりました。
入行2年目にとった資格
- 銀行業務検定 財務2級
- 銀行業務検定 法務2級
- FP技能検定1級(学科試験)
- 銀行業務検定 税務2級
1年目で主要3級科目は合格済みなので、2年目は各種2級資格の取得に臨みました。
なお、銀行業務検定は実施月によって受験可能科目が決まっています。主要3科目を1年間に取得するため、予め通年の計画を立てて勉強に取り組んでいました。
さらに付け加えると、FP1級試験は2度目の受験で合格(9月不合格、翌年1月合格)しています。時には不合格を経験しながらも、挫折せずに前進していました。
入行3年目にとった資格
- FP技能検定1級(実技試験)
*1級FP試験は、銀行員が取得する資格の中では珍しく、学科試験と実技試験(面接)の2段階に分かれています。
受験者は、みな高難易度の学科試験をクリアしている(例外あり)とはいえ、合格率は毎回80%前後の難易度設定。実技試験単体はそれほど難しくありませんが、この試験の合格を経て、ようやく1級FP技能士の認定を受けることができます。
苦労して取得した甲斐あって、行内でも最年少合格者としてスポットライトを浴びるなど、キャリアアップのチャンスを広げることができました。
入行4年目~5年目にとった資格
- 宅地建物取引士
- 証券アナリスト(1次3科目合格、2次)
*後ほど解説する「5年目までに取得必要な資格」は、3年目までで一通り合格済みです。したがって、4年目以降は「義務」から「自己啓発」の面が強くなってきました。このあたりの資格になってくると、行内でも保有している人は少数派になりますので、大きな武器にもなります。
また実際に取り組んでみると分かるのですが、どちらも「世間の想像よりはるかに簡単」なんです。いずれも過去問の焼き増しで、証券アナリストに至っては合格率50%程度(1次試験の科目別合格率)です。なんてことありません。
☆必須資格を押さえつつ、若いうちから高難易度の資格を目指すことで、周囲の注目・高い人事評価獲得にもつながります。銀行員が取得する資格はとても広範囲ですが、一つ一つチャレンジしてみましょう!
銀行員がとるべき資格を紹介 (~優先順位別~)
優先順位☆☆☆☆☆(取得必須、不合格の場合何度でも再受験要)
- 証券外務員1種、2種
- 生命保険募集人資格(一般)
- 生命保険募集人資格(変額、専門)
- 損害保険募集人資格
*前章でも少し触れましたが、これらの資格は推奨ではなく「必須」資格になります。なぜなら、これらを保有していない=仕事にならない(金融商品販売ができない)からです。
ただし、大半の行員が保有しているだけあり、難易度はどれも低め。各銀行規定の学習ツールを用いるだけでも、十分対策は可能と考えられます。
優先順位☆☆☆☆(最低限必要……)
- 銀行業務検定主要3科目ー各3級(法務、財務、税務)
- FP技能検定3級
*必須ではありませんが、基本的には「保有すべき」資格になります。特に上記4科目においては、銀行員の基本とも呼べる知識が詰まっていますので、持っていない=周りの話についていけないということにもなりかねません。
なお、後の2級資格の前提となる知識も多いので、取得だけを目的とせず身になる学習を行うことをお勧めします。
優先順位☆☆☆(できれば取得したい資格)
- 銀行業務検定主要3科目ー各2級(法務、財務、税務)
- FP技能検定2級
- 銀行業務検定その他(外為、相続関連ほか)
*ここまでが銀行員として「保有した方がよい」資格になります。昇進の要件としている銀行も多く、営業成績は抜群なのに、これらを持っていないから昇進できない……ということにもなりかねません。
実際周囲を見ていると、2年目までに全て取得済みの人もいれば、入行10年以上だが1つも持っていない……という方もいます。
即ちこれらの資格取得可否が、周囲と差をつける重要ポイントとも言えます。
優先順位☆~☆☆(なくても良いけど、あるとスゴい資格)
- FP技能検定1級
- 宅地建物取引士
- 証券アナリスト
- 社会保険労務士
*上記の高難易度のものは、「あった方がよい」資格になります。取得していないからといって、評価がマイナスになることは基本的にはありません。
その反面、もし取得することができれば、大きなアピールポイントになります。
実際に私が入行2年目で1級FP試験に合格した時の周りの反響は大きく、異動先・賞与査定といった面で優遇されていたと感じます。
銀行員として実用的な知識を身に着けるためにも、優先順位をつけて資格取得に取り組むことが大切です。一通りの業務検定をクリアした後は、身構えずにドンドン高難易度資格にもチャレンジしましょう!
銀行員が5年目までに取るべき資格を優先順にロードマップしてみた
*私の経験を踏まえ、入行5年目までの資格取得についてロードマップ化しました。
ポイントを以下にまとめてみました
- 入行1年目のうちに、重要資格(販売資格、各種3級科目)は取得すべき。もしできなかった場合でも、2年目の前半までには取得しないと、周りに取り残されてしまう危険性もある。
- 5年目までには各種2級資格を取得すべき。早い人は2年目までに全て取得しており、できる人ーできない人との差が開き始める重要な転換点。
- 各種2級資格取得後は、高難易度資格にも積極的にチャレンジし、自身の強みを伸ばしていくべき。ただし必須ではない。
まとめ
銀行員が取るべき資格の優先順位についてまとめます。
入行1〜2年目は、必須資格を優先的にとり、上司や先輩に「こいつ出来る!」と印象付けることが重要です。
その上で、徐々に資格の難易度を上げていきましょう。難関資格を持っていれば、それだけで一目置かれる存在になるのは間違いなしです。とはいえ、牛の歩みも千里。すぐには全ての資格を取得することはできません。資格の優先順位をチェックして、一つ一つチャレンジしてみてください。